【文章】ロロヴォーカ02:逡巡と解決策


 クリフから「俺とだけ話してほしい」と言われ、それに対してまるで浮気や二股を詰められた男のようにグダグダと言い訳、いや、嫌われないようにと言葉を選んでしまった。
さらには色々なことを誤魔化すかのように俺自身の顔を隠し、彼の目を塞ぎ、行為に及んだ。最期は顔を見たいと目隠しは外したりもしたが、あの夜のことを思い出すと、「可愛かった」「愛しい」という感情もあるがそれ以上に申し訳ない気持ちが大きい。


 彼は若い。俺の三分の一しか生きておらず性知識に乏しい子どもだ。しかも聖職者で、魔族との関わりを持つことすら危ういし、同性愛の困難さももちろんある。……それに、彼の嫉妬や寂しさを混ぜたようなあの発言は、クリフの気持ちがクリフ自身に追いついてないことを察してしまった。
 もちろん、彼の気持ちや感情を推定したところで今出るのは溜息だけ。さすがにこの内容をエルフ男、もといワーナムに伝える気にはならず文字通り頭を抱えた俺は考えながら夜の森を彷徨った。


結局俺は「面白そう」と勝手な理由で近づいて距離を縮めた彼をどうしたいのか。
お前は若すぎるから、ただの遊びだろ、あの夜は冗談だった、と関係を止める言葉は沢山浮かぶがそれを実行して傷つけたいとは思わない。逆に、俺はクリフが好きだ、愛してる、というのは簡単だが、俺から一つの回答例を提示してそれが正解だと思い込ませるような解決のさせ方も違う気がしている。
彼自身には彼自身で言葉を出してほしい。しかしこれは、俺が受け身になる言い訳をしているだけかもしれない。そう考えを廻らせウロウロと彷徨ううちにいつの間にか朝を迎え、居心地の悪い日が当たる場所よりも楽だからとアザルラへ足を運んだ。

待っていたのかそれとも偶然か、その日はちょうどクリフがいた。あの夜のことを問われてしまわないようにと、どうでも良い話を俺からたくさん振って時間を潰させた。
実際、クリフも思う事はありそうな顔をしていたがその思いを口に出さないのであれば今後もそれで良いのかもしれないと、そう思っていた。


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数日後のこと。思い詰めたような顔をしたクリフが「少しいいか」と個室へ手を引く。
どうしたのだろうか?名前を呼ぶも反応はなく、無言で服を脱ぎ始めた手は震えているようだ。

「なぁ、クリフ、待ってくれ。どうしてそんなに無口なんだ?」

手を止め身体をこちらへ向かせると、クリフは涙を流し、一呼吸置いて「ロロヴォーカ、お前が欲しい」と俺に発した。
数日考えてこの行動に至ったのかという納得と同時にやはりという心配が現れる。

「分かった良いぞ、と言いたいけど。やめておこうかな」
「な、なぜ?俺じゃダメなのか」

そう言ってポロポロと涙が止まらない彼にそうじゃないと涙を拭う。あぁ本当に、彼はどこまでも純真無垢な子どもだ。俺が教えた行為だけが全てじゃないのをどう伝えたら良いだろう。

「ダメな事はない。むしろクリフが勇気を出して誘ってくれて嬉しいからすぐにでも手を出したい。でもダメだ。ごめんな。俺の話を聞いてくれるか?」

数日間の考えてた事、これまでしてきた事、それから俺はクリフが好きだということを今夜はちゃんと話をしよう。